20260730

ブルーナボインとの靴

 毎回ブルーナボインとのダブルネームのシューズはデザイナーの辻さんのアイデア、想いを元にデルモナコがそれを形にしては修正を繰り返していく普通と言えば普通なのですが割とガチンコのモノづくりスタイルだと思っています。いつもだいたいサンプルのリミットは「エエ靴になったら」と言われます。「エエもんでも売れる時代じゃなくなったのに先ずはエエもんにはせなあかんのちゃう?」と取り組み始めの頃に辻さんに言われたことが心に刻まれてしまって消えません。今回のBDプレーンについて辻さんのイメージは「なんやろなー、デザインしてないんやけどでもその感じが何となくデザインになっている感じやねんっ!」とおっしゃられていたと記憶しています。コレは多分難しいヤツと私の中の靴職人が危機感を感じたことを記憶しています。一先ずデザインしていないという部分を私の中で中庸と置き換えて切り替えのないホールカットをベースに試作を進めました。途中からタンを無くし甲が見えるようにしてアイレットを二穴にしてとその部分だけでグッと惹きつける度が高まりました。そこへ辻さんの手書きのキルトタンのアイデアがドッキングしてグッと靴の輪郭が固まってきました。仕上がりの丸っとした柔らかな雰囲気からは裏腹に最終はラスト、パターンともミリ単位の調整の祭り。全身全霊で祭り。辻さんのより良いものにするという多分ずっと続けてこられた物への見方関わり方がBDプレーンを通して流れ込んできているように思っています。あとはつま先以外アッパーとライニングの間に全面に挟み込んだクッションが靴を一回り大きくしちょっと目のいってしまう存在感。靴だけどフカッとした触り心地をお楽しみください。ブルーナボインとの靴は何かの生き物みたいに仕上がることが多いなとブログを書きながら気付きました。今回も山あり谷ありで仕上がった靴なのでまだまだ書きたいことはありますがちょっとこれくらいにしておこうと思います。何かのタイミングにこの靴を履いた方を目撃することを楽しみにしています。ご注文いただきました皆さまありがとうございました。

20260609

男は愛嬌カンフーシューズ

 メンズパンプスをリリースしてから3年位した頃だったと思うのですが展示会シーズンでもなんでもない時に思い立ってメンズカンフーをリリースしました。最初は男性にエナメルの靴を履いて頂きたいという想いで仕立てていたのですが、素材のラムの輸入がストップしたこともあり2025SSからリニューアルして今の仕様で仕立てています。メンズパンプスを紳士の為のパンプスと呼ぶことに対してメンズカンフーは紳士の運動靴といったところでしょうか。



メンズパンプスのコンセプト「そこはかとない妖しさ」に対してメンズカンフーのコンセプトは「とにかく可愛げ」です。両方とも男性にとってとても大切な要素だと思っています。



日本では私の知る限りカンフーシューズのデザインは特に限定されておらずブランド、メーカーごとに解釈は様々です。デルモナコではカンフー=功夫する時に着るであろう道着の帯をサイドレースになぞらえました。実際に道着の帯をキュッと締めていただく様に靴紐を締めていただくと履き口が狭まって足が抜けにくくなるのでメンズパンプスよりもワンサイズアップで厚手のソックスまで合わせる靴としてもお楽しみいただけます。粘りも艶も抜群なマットな牛革はつま先の芯を軽くすることで履き込むことでよりクタッと足に寄り添ってくれます。


ブラックのヒールとアッパーがナチュラルのレザーソールをサンドしているところが何気にとても気に入っています。黒靴なのに重くない不思議なバランスです。



メンズカンフーもパンプスラストを使用しているので一般的なメンズの靴よりも捨て寸が短くなっているのですがそのジャストさとサイドレースの可愛らしさとナチュラルのソールが妙なる調和を引き起こしてしまっている説があります。ドレスのサイドレースをベースにカンフーという中国武術をモティーフとする西洋、東洋をルーツにしたデザインだからなのか和装にもテーラードにも好相性なシューズに仕上がっています。生きていれば男はつらいよカンフーシューズの日もぼちぼちありますがどっこいめげずに男は愛嬌カンフーシューズで乗り越えていきましょう。

20260606

Tスト再び

もうずいぶん前になりますが販売のお仕事をされている女性の方から一日立ち仕事をしても疲れにくくて立ち姿が美しく見えるヒールの靴を作ってほしいと依頼がありました。それまではせいぜい30mm位までしかヒールを積み上げたことが無かったので最初は色々と試行錯誤の連続だったのですがエイヤー!と作り始めてから個人のお客様からのご注文やお取り扱いの機会に恵まれずっと仕立て続けてきました。昨年アッパーに使用していたベビーカーフの仕入れが困難になり一旦製造を中止していたのですがさらにこのデザインにふさわしいと思えるレザーに変更することでこの度リニューアルいたしました。

 


クラシックで美しいトウフォルムとハードなバックル、安定して歩くことができる革を一枚一枚積み上げたヒール。一見スタイルを選びそうだけどなんだかんだ色々と合わせることができて女性の凛とした美しさが醸し出されることを願って仕立てています。私が男性でヒールの靴を履くことが無いので(今のところ)余計に自分自身が女性だったならと分からないものに対して貪欲に向き合えたのが良かったのかなと思っています。すでに把握できていることだけを続けるよりも全然分からないことに飛び込むと馴染むまでは色々と苦労はありますがふっと新しい表現に行きついたりするので面白い。作りは100%分るのにTストを履いているお客様の気持ちは完全には分からない。その塩梅が何だか面白い。



T-strap black×black。普段使いからお仕事やオケージョンなどのフォーマルなシーンまで活躍してくれます。今回からバックルをシルバーからブラックに変更したのでよりシックさが強まりました。アンティークのドレスシューズのような雰囲気。バックル以外。





T-strap black。ブラックのアッパーにシルバーのバックル、ナチュラルのソールで仕立てました。black×blackよりも柔らかな雰囲気でお仕事から休日のお出かけまで幅広くお楽しみいただけるカラーです。このカラーのTストで美術館に行っていただきたい!という想いが漠然とあります。





T-strap beige。ベージュのアッパーと対比するようにバックルもソールもブラックで統一しました。こうする方がベージュがより美しく映えますし装いに深みが出るように思います。私が女性だったならこのカラーを選ぶんだから!と仕立てる度に思っています。特に革靴は色味が少なくなりがちでその方が装いとマッチしやすいということもあるのですが、デルモナコのTストのように2ないし3色くらいを丁寧に組み合わせていくとなんだか履いていてグッとくる領域に踏み込んでいけるように思っています。あとどのカラーでもいいのでキャップとバックパックのスタイリングにTストを組み込んでいただきたい!という想いも漠然とあります。

デルモナコはもともと流行とはほとんど無縁といってもいい紳士靴からスタートしたこともありいわゆるアパレルのトレンドを追ったり追いついたりするということが強烈に苦手です。でもアパレルのリアルと虚構に人が掛け合わされることで新しく生まれる喜びや楽しみの可能性にとても惹かれています。春夏秋冬半年ごとにする展示会では毎回新作を作りますし継続デザインのブラッシュアップもし続けていますがトレンドに乗れた実感は今まで一度もありません。私に実感がないのでたぶん一度も乗っていないんだと思います。やっぱり歩きやすさと美しさを木型に込めて素材やパターン、ディテールに想いを込めてなるべく今までに買って気に入っているお洋服や、これから出会う今までとは少しテイストの違うお洋服とも馴染んでしまう、10年20年とメンテナンスを重ねながら深めていっていただける自身の相棒になり得る靴を仕立てることしかできない感がこれだけ続けてきて流石にありますので、その地味な靴作りを華やかなアパレルの世界にじっとりと持ち込んでいきたいと思っています。先ずはもう何年も前から延々と仕立て続けていてリニューアルしてちょっとまた良い雰囲気に仕上がったTスト達をお楽しみください。