もうずいぶん前になりますが販売のお仕事をされている女性の方から一日立ち仕事をしても疲れにくくて立ち姿が美しく見えるヒールの靴を作ってほしいと依頼がありました。それまではせいぜい30mm位までしかヒールを積み上げたことが無かったので最初は色々と試行錯誤の連続だったのですがエイヤー!と作り始めてから個人のお客様からのご注文やお取り扱いの機会に恵まれずっと仕立て続けてきました。昨年アッパーに使用していたベビーカーフの仕入れが困難になり一旦製造を中止していたのですがさらにこのデザインにふさわしいと思えるレザーに変更することでこの度リニューアルいたしました。
クラシックで美しいトウフォルムとハードなバックル、安定して歩くことができる革を一枚一枚積み上げたヒール。一見スタイルを選びそうだけどなんだかんだ色々と合わせることができて女性の凛とした美しさが醸し出されることを願って仕立てています。私が男性でヒールの靴を履くことが無いので(今のところ)余計に自分自身が女性だったならと分からないものに対して貪欲に向き合えたのが良かったのかなと思っています。すでに把握できていることだけを続けるよりも全然分からないことに飛び込むと馴染むまでは色々と苦労はありますがふっと新しい表現に行きついたりするので面白い。作りは100%分るのにTストを履いているお客様の気持ちは完全には分からない。その塩梅が何だか面白い。
T-strap black×black。普段使いからお仕事やオケージョンなどのフォーマルなシーンまで活躍してくれます。今回からバックルをシルバーからブラックに変更したのでよりシックさが強まりました。アンティークのドレスシューズのような雰囲気。バックル以外。
T-strap black。ブラックのアッパーにシルバーのバックル、ナチュラルのソールで仕立てました。black×blackよりも柔らかな雰囲気でお仕事から休日のお出かけまで幅広くお楽しみいただけるカラーです。このカラーのTストで美術館に行っていただきたい!という想いが漠然とあります。
T-strap beige。ベージュのアッパーと対比するようにバックルもソールもブラックで統一しました。こうする方がベージュがより美しく映えますし装いに深みが出るように思います。私が女性だったならこのカラーを選ぶんだから!と仕立てる度に思っています。特に革靴は色味が少なくなりがちでその方が装いとマッチしやすいということもあるのですが、デルモナコのTストのように2ないし3色くらいを丁寧に組み合わせていくとなんだか履いていてグッとくる領域に踏み込んでいけるように思っています。あとどのカラーでもいいのでキャップとバックパックのスタイリングにTストを組み込んでいただきたい!という想いも漠然とあります。
デルモナコはもともと流行とはほとんど無縁といってもいい紳士靴からスタートしたこともありいわゆるアパレルのトレンドを追ったり追いついたりするということが強烈に苦手です。でもアパレルのリアルと虚構に人が掛け合わされることで新しく生まれる喜びや楽しみの可能性にとても惹かれています。春夏秋冬半年ごとにする展示会では毎回新作を作りますし継続デザインのブラッシュアップもし続けていますがトレンドに乗れた実感は今まで一度もありません。私に実感がないのでたぶん一度も乗っていないんだと思います。やっぱり歩きやすさと美しさを木型に込めて素材やパターン、ディテールに想いを込めてなるべく今までに買って気に入っているお洋服や、これから出会う今までとは少しテイストの違うお洋服とも馴染んでしまう、10年20年とメンテナンスを重ねながら深めていっていただける自身の相棒になり得る靴を仕立てることしかできない感がこれだけ続けてきて流石にありますので、その地味な靴作りを華やかなアパレルの世界にじっとりと持ち込んでいきたいと思っています。先ずはもう何年も前から延々と仕立て続けていてリニューアルしてちょっとまた良い雰囲気に仕上がったTスト達をお楽しみください。サイズ感などご不明な方はお気軽にお問い合わせください。
